中国の更年期世代を取り巻く3つの実態
中国では今、生理やPMSについて女性が自分の体をオープンに語る文化が広がっています。ところが「更年期」というテーマになった途端、当事者女性の声は急に小さくなる――そんな実態が現地メディアの報道から見えてきました。本記事では、中国における更年期世代女性の情報環境と、関連市場の動きを整理します。
結論:中国の更年期世代を取り巻く3つの実態
1.女性の健康への関心自体は非常に高い
約138.1億回2026年3月時点、中国版instagram「小紅書(RED)」での「#女性健康」というハッシュタグの閲覧数です。
2.「更年期」だけは語りにくい
生理やPMSは語られる一方、更年期になると当事者女性自身の声は減り、周囲から見た更年期の話が目立つと指摘されています。
3.ケアの受け皿はまだ発展途上
2026年7月、45歳以上の女性を対象にした更年期記録アプリのデモが発表されるなど、対応するサービスがようやく生まれ始めた段階です。
1.女性の健康への関心は非常に高い
2026年3月時点の小紅書(中国版instagram)の公開データをまとめた業界資料によると、女性の健康に関するハッシュタグの閲覧数は次のとおりです。
| ハッシュタグ | 閲覧数 |
|---|---|
| #女性健康 | 約138.1億回 |
| #女性护理(女性ケア) | 約8.3億回 |
| #私处健康(デリケートゾーンの健康) | 約3.2億回 |
「#PMS」「#黄体期」「#閉経」「#ホルモン変動」といった、より具体的なハッシュタグで自分の体について発信・検索する女性も増えていると報告されています。女性が自分の体について知ろうとする姿勢は、日本と大きく変わらないようです。
2.ところが「更年期」になると、声が小さくなる
2026年7月、中国のメディア「虎嗅」は「彼女たちは、今もネットで更年期について大きな声で語れない」という趣旨の記事を掲載しました。食事、旅行、子どもの教育、美容、健康、ダイエットなど、40代・50代の女性たちも様々な話題をネットで発信している一方、自分自身の更年期の変化についてはとたんに語られなくなる、という指摘です。
実際に「更年期」を検索しても、当事者女性自身の率直な体験談より、「更年期の母親との接し方」「更年期の妻について」といった、周囲から見た更年期の情報が目立つことが紹介されています。女性の健康全般への関心の高さに対して、更年期という領域だけが取り残されている状況がうかがえます。
3.やっと生まれた「お母さんを見る」アプリ
2026年7月、中国で更年期世代の女性を対象にしたアプリのデモ「更更好:看见妈妈(お母さんを見る)」が発表されました。開発したのは、中学生の頃に母親が更年期を迎え、当時何が起きているか分からず衝突した経験を持つ女性です。母親が自分の症状を紙とペンで3〜4年間記録し続けていたことを知ったことが、開発のきっかけになったと報じられています。
対象は45歳以上の女性で、想定されている機能には次のようなものがあります。
- 声でその日の症状を記録する
- AIが体調をまとめる
- 家族と状態を共有する
- 女性同士で交流する
- 匿名で気持ちを吐き出す
- AIによる心のサポートを受ける
月経や妊娠を管理する女性向けアプリは中国にも以前から存在していましたが、更年期世代に特化したサービスはこれまで少なく、長らく空白領域だったことがうかがえます。
4.データで見る、中国女性の更年期症状
中国CDCなどが2023〜2024年に、40〜60歳の中国人女性42,304人を対象に行った調査によると、更年期に関連する症状として多かったのは次の3つです。
| 順位 | 症状 | 該当率 |
|---|---|---|
| 1位 | 不眠 | 50.0% |
| 2位 | 疲労 | 48.2% |
| 3位 | 緊張・神経過敏 | 46.9% |
いずれも周囲からは見えにくい不調で、これが何日も続くところに更年期のつらさがあると考えられます。
5.広がる治療の選択肢
医療の現場にも変化が見られます。中国9都市・104病院の実際の処方データを調べた研究では、2019年から2023年までの5年間で、更年期症候群に対するMHT(更年期ホルモン療法)の処方件数が86.08%増加しました。これは中国女性の86%がMHTを使っているという意味ではなく、調査対象病院での処方件数がその期間に増加した、という数字です。
2026年7月に発表された別の患者調査では、治療を始めた351人のうち、MHTを選んだ人が45.0%、MHT以外を選んだ人が48.1%でした。さらに、MHT以外を選んだ女性の81.7%が、更年期症状に用いられる中医薬(中国伝統医学の薬)を使用していたと報告されています。西洋医学的なホルモン治療と中医学、どちらか一方ではなく複数の選択肢が現場に存在している点は、中国らしい特徴と言えます。
中国では女性の健康への関心自体は非常に高い一方、更年期というテーマに対応する商品・サービスの受け皿はまだ発展途上です。声に出しにくいからこそ、症状記録アプリや、家族に頼らず自分のペースでケアできる商品への潜在需要は大きいと考えられます。日本国内で先行して更年期ケア商材を展開しているメーカーにとって、越境ECを通じた中国市場への参入は、比較的競合の少ない今のうちに検討する価値があります。
出典・参考リンク
- 小紅書(RED)公開データにもとづく業界資料(2026年3月時点)
- 虎嗅「她们,还是不敢在网上大声谈论更年期」2026年7月20日
- 中国CDC等「40〜60歳の中国人女性42,304人を対象とした更年期症状調査」(2023〜2024年)
- 中国9都市・104病院の処方データにもとづく研究(2019〜2023年)
- 更年期治療の患者調査(2026年7月発表)

